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物語の舞台は大阪にある自立生活センター。ここは障害当事者が運営をし、日常的に手助けを必要とする人が、一人で暮らせるよう支援をしている。先天的なものだけでなく、病気や事故などにより様々な障害を抱えながら、家族の元や施設ではなく、自立生活を希望する人たち。自由と引き換えに、リスクや責任を負うことになる自立生活は、彼らにとってまさに“命がけ”のチャレンジだ。家族との衝突、介助者とのコミュニケーションなど課題も多く、時に失敗することもある。しかし、自ら決断し、行動することで彼らはささやかに、確実に変化をしていく──。
監督は自らも介助者として働く田中悠輝。障害当事者からの「自分たちの姿を撮って欲しい」という声を受け、自立支援の現場で3年にわたり撮影を続けた。彼らとの関わりを通して、自分自身の内に「障害者」という勝手な枠組があると気づいた監督が、その枠組を壊し、自分を、社会を、変えていこうと奮闘する人々を見つめ、“生きづらさ”を抱えた人たちが、“自分らしさを”取り戻す瞬間とその輝きを映し出す。
重度の障害があっても地域で自立して生活ができるように、必要なサービスを提供する事業体であり、同時に障害者の権利の獲得を求める運動体である。センターは障害当事者により運営され、身体障害に限らず、知的、精神の障害者のサポートもしている。1972年、アメリカ・カリフォルニア州に世界初の自立生活センターが誕生。1986年に日本でも初めての自立生活センターが生まれた。2019年現在、全国に121の自立生活センターがある。
夢宙センター
2002年3月に大阪市住之江区に設立。
障害者が地域で一人暮らしをするために、ヘルパー派遣、困ったときの相談、仲間・居場所づくりをサポートする自立生活センターとして開設。
しゃべれるやつだけがIL(自立生活)運動で中心メンバーになったらいいだけじゃなくて、置き去りにされている人たちを、どう一緒に考えるか
平下耕三|社長
JIL(全国自立生活センター協議会)代表、NPO法人自立生活夢宙センター代表。骨格形成不全症の障害当事者。障害の有無を問わず人望が厚く、大阪にとどまらず、日本全国、世界規模で交流を生み出す。
どんだけこの目の奥を読もうとしてるか。この笑顔の裏に何があるんかなあって
小角元哉|ペーター
夢宙センターのコーディネーター。トリスのILP(自立生活プログラム)を担当する健常者スタッフ。元劇団員で、夢宙センターでも劇団運営や映画製作を担う。
(自分が出演した映画の上映後に)ありがとうございます
木下浩司郎|トリス
大阪市厚生療育センターから地域での自立を目指す障害者。2016年にくも膜下出血により高次脳機能障害を受障。右半身の麻痺と失語症がある。障害当事者の先輩チョッキと健常者スタッフのペーターとともに自立を目指す。
この環境を受容するってことが“障害を受容する”ってことなの?
大橋ノア|ララ
夢宙スタッフ。筋ジストロフィーの障害当事者。NHK「バリバラ」などTVでも活躍する夢宙の広告塔。障害当事者リーダーとしてアメリカへの留学を決意する。
失敗する時もあると思うんですよ。でもそれが生きていく力になりますもんね
内村恵美|えみちゃん
夢宙センターの事務局長。シャルコー・マリー・トゥース病の障害当事者。飛鳥ちゃんのILP(自立生活プログラム)を担当。ヘルパーの男性と同棲中。
親はどっかで泣いてると思う。“ごめんね”って言うといてください(お母さんの言葉)
阿部明日香|あっすー
知的と精神の障害当事者。親元で暮らしながら自立を目指す。精神からくるてんかんのような発作に悩まされている。
ムーブメント
2010年10月に大阪市阿倍野区(現在は天王寺区)にて設立。
相談支援・介助派遣事業・生活支援を中心に行なう。
人がどんどんえぐるように上っていく、そういう一端を担っていると思ったら、これはすごい仕事やで。この仕事をやるために俺は頸損になったんやと思えるように今はなった
渕上賢治|フチケン
自立生活センター「ムーブメント」代表。オートバイ事故で脊椎損傷の障害当事者となり、20年近く寝たきりであったが、夢宙センターに出会い自立。その後自身で「ムーブメント」を立ち上げる。
(自立生活楽しい?)楽しいねえ
山下大希|たいき
18歳まで生活していた山奥の施設を離れ、自立を目指す。脳性麻痺と知的の障害当事者。
怒ったり、叱ったり、それを自分がやってやろうみたいなのは、ヘルパーとして、でしゃばりすぎかなと思うんで
川﨑悠司
自立生活センター「ムーブメント」新人ヘルパー。映画のOP/EDテーマをうたう、バンド「ガナリヤ、サイレントニクス」Gt.Vo.
リアライズ
2008年9月に大阪・泉大津市に設立。
大阪府南部に唯一の自立生活センターとして地域移行の実現を目指す。
仕草とか、わかることは想像の域でしかなくて。ただ、どういう生活がいいのかを考えていくことが大事で、そう思ってくれる人を一人でも増やすっていうことが自立生活に近づく方法
三井孝夫
自立生活センター「リアライズ」代表。骨形成不全症の障害当事者。幼馴染の池本さんの自立に向けて10年以上伴走している。
ほんとに自立できるんかなあって思いながら、ヘルパーさんを利用するところから始めようと(お母さんの言葉)
池本博保|ヒロくん
重度の知的と身体の障害当事者。母親と姉夫婦と一緒に実家で暮らしながら自立を目指している。
すごい目で訴えてくるというのが、最近、わかってきましたね
川端延昌|ノブくん
自立生活センター「リアライズ」ヘルパー。池本さんとの出会いからヘルパーを仕事にすることを選んだ。
監督 田中悠輝(たなか・ゆうき)
1991年東京都生まれ。2013年から福岡県北九州市の認定NPO 法人抱樸(ほうぼく)で野宿者支援にかかわる。2015年に東京に戻り、翌年4月自立生活センターSTEPえどがわで重度訪問介護従業養成研修を修了し、ヘルパーとして働く。同年6月鎌仲ひとみ率いる「ぶんぶんフィルムズ」のスタッフとなる。その後、映画『インディペンデントリビング』の撮影開始。2017年から認定 NPO法人自立生活サポートセンター・もやいでコーディネーターとして勤務。2018年から日本初の市民(NPO)バンク「未来バンク」理事。
<監督の言葉>
本作は“自立生活運動”の現在をテーマにした作品です。“自立生活運動”は、障害者が地域で暮らすために何が必要か、そのことを地域や社会に訴え続けて様々な法律や制度をつくってきた運動です。
私も2016年よりヘルパーとして働き始め、この運動が持つ社会を変革する力や出会った人を元気にする場面を見てきました。その中で映画に出てくる人々に出会い、「この運動の価値を伝える映画をつくってほしい」と言われたことから映画製作をスタートしました。 今回が私にとってはじめての作品です。経験や技術が足りないなか製作チームに助けられながら完成、そして劇場公開が決定しました。これからが本当に「この運動の価値を伝える」段階になっていきます。本当により多くの方にこの映画を観てほしいと考えています。
プロデューサー 鎌仲ひとみ(かまなか・ひとみ)
映像作家。早稲田大学卒業と同時にドキュメンタリー映画制作の現場へ。 2003年ドキュメンタリー映画「ヒバクシャー世界の終わりに」を監督。全国400ヶ所で上映。 2006年「六ヶ所村ラプソディー」は国内外800ヶ所で上映。2010年「ミツバチの羽音と地球の回転」も全国600ヶ所での上映に加え、フランス・ドイツ・オーストラリア・インド・アメリカ・台湾など海外でも上映が進んでいる。 2012年 DVD「内部被ばくを生き抜く」発売と同時に公開開始。国内外850ヶ所で上映。2015年3月 新作「小さき声のカノン」を全国で公開。本作は初のプロデュース作品となる。
<プロデューサーの言葉>
普通に暮らしていると、障害を持って生きている人たちに出会う機会があまりないような気がします。 あるいは無意識に見ないようにしている? 本作に出てくる人々は、障害があっても、一人で自由に暮らしたいと望み、それを実現したり、坂の途中だったり、そんな人たちを支援する同じ障害者だったりします。世の中の数多ある、生きづらさの一つとして障害を捉えるなら、この人たちはとても身近に感じられるはずです。本作は、彼らを、ほらこんなに頑張ってるよ、健気にやっているよ、ではなく、限りなく等身大に描いています。誰だってデコボコなんだから、障害者だってデコボコでいいじゃないか、と。この作品を観た後、どこかで障害者と出会ったら、気軽に声をかけたり、普通に話せたりできるかも、と感じてもらえたらいいなぁと思います。自立って、一人で頑張ることじゃないんだ、とこの方たちから学びました。障害の不自由さがあっても、人は心を自由にひらきながら生きることができるんだということも。
撮影・構成・編集 辻井潔(つじい・きよし)
1979年東京都生まれ。日本映画学校 16期卒業。在学中に知的障害をもつ弟の日常を描いた映画『国分寺リズムボーイ』を監督・撮影・編集。卒業後は安岡卓治に師事、助手を経た後、編集者となる。主な編集作品に『花と兵隊』(09/松林要樹監督)『ただいま それぞれの居場所』(10/大宮浩一監督)『ミツバチの羽音と地球の回転』(11/鎌仲ひとみ監督)『隣る人』(12/刀川和也監督)『ドコニモイケナイ』(12/島田隆一監督)『イラク チグリスに浮かぶ平和』(14/綿井健陽監督)『さとにきたらええやん』(15/重江良樹監督)ほか多数。2020年公開予定の『タゴールソングス』(佐々木美佳監督)では録音、編集としても参加、本作と同じく現場に同行し作品に携わる。
<編集マンの言葉>
監督は障害者の活動や歴史を知っていきながら、結果としてその課題について俯瞰した作品の作り方をさけ、あえて身近な視点から生活を軸に人との出会いや喜怒哀楽を描いていこうと決めました。それは監督自身がヘルパーという経験がある中で、まず伝えるべきはこの現場にある“体感”だという想いがあったからなのだと思います。そこには登場人物それぞれへの想像や共感をまずは促したいという監督自身の等身大の衝動を感じずにはいられませんでした。特にこの大阪という土地での出会いは自分にとっても衝撃的なものがあり、これほど生活を通して“笑う”ことで人が繋がっている場を見たことがありません。勿論、その背景には想像しがたい複雑で厳しい現実を抱えたそれぞれの経験や苦悩があります。しかし、前向きな“笑い”がその距離を縮め、時間を共有させ、その親密さの先にいつしか映画を観ている人たち自身の経験や苦悩を当事者たちの姿と重ねて想える瞬間が訪れるのだとすれば、結果としてこの映画がより広く身の周りの人々について想い、生活の中のふとした瞬間に一緒にその現実にたいして試行錯誤していこうかと思えるきっかけとなれば幸いです。
人は、いつ障害を抱えるかわかりません。その時、在宅で療養できるという保証は全くありません。致しかたなく施設に行けば…。あなたは、自立生活に憧れることでしょう。
舩後靖彦
参議院議員/難病 ALS 当事者
障害者がヘルパーを利用しながら、本人主体の意思決定の下でひとり暮らしをする「自立生活」の記録映画。種々の障害を持った、正にこれから自立生活を始めようとしている障害者を追うカメラは、自分らしさを希求する「生の躍動」を瑞々しく捉える。必見。
中川敬
ミュージシャン/ソウル・フラワー・ユニオン
頼り頼られて生きていくのが人という生きものだと心から納得していれば、自立は孤独とは無縁な行動だということがこの映画から伝わってきます。
谷川俊太郎
詩人
ALSで全身麻痺の国会議員・舩後靖彦氏も、施設を出て「自立生活」を始めたことが、新しい人生の第一歩になった。あの自立がなければ、いまの彼もなかったはずだ。障害者の自立とは、人生を取り戻すこと。この映画は、それを力強く物語ってくれる。障害者と介助者が互いに育ち合う姿に感動した。
寮美千子
作家
人は必ず、誰かの生きる力になり、また誰かに生かされている。病気だろうと、障害があろうと、また悲しくて、希望を失っても、生きていくしかない。だから人を信じて、繋がっていく。 苦しいけれど、生きるって楽しいこともある。わかりあえないからこそ、伝える努力をする。人の強さと優しさに気づかされた作品です
伊是名夏子
コラムニスト/「ママは身長100cm」著者
「当たり前」を取り戻す過程にいる人、新しい人生を踏み出した人、そして、その人達を家族のように支える人達。簡単に見えて、表面には映し出されない細かい人間の本質を鏡のように映しだした映画。「自立」とは?「社会」とは?ということを健常者も含めて深く考えさせられる。だからこそ、この映画を通して見えてくる本当の「自立生活」は人の心を揺さぶるものがあるのだと思う。
大橋ノア
自立生活夢宙センター外部顧問/筋ジストロフィー 当事者
そこには「自由」がある 家族のもとや、病院、施設ではなく、地域で暮らしていく__自立生活は、時に苦しく、失敗したり、しんどくなることもある。でも、そこには「自由」がある。 この映画は、新たな人生をスタートさせた人たちの物語だ。彼らのチャレンジは、閉塞感にみちて先の見通せない私たちの社会を照らす、一筋の光になる。
大西連
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長
まるで自分が自立生活センターにお邪魔して、登場する一人一人と会話しているような不思議な体験だった。日々抗いながらも自分らしさを発見し、育てていく。彼らの姿は眩しくて、それを支える人々はかっこいい。自由に生きることができず、縛られていたのは僕の方だったのかもしれない。
林田光弘
ヒバクシャ国際署名キャンペーンリーダー
ボクが自立生活センターで働き始めたのは、1992年。当時は、施設や親元から自立したい人の応援をがむしゃらにやっていた。そして、あれから17年。「インディペンデントリビング」を観たときに、若かりし頃の懐かしさの向こうに色あせない「現実」が見えた。「自分らしくいきる」と向き合うには、とてもいい映画だと思う。
玉木幸則
「バリバラ」コメンテーター
ここに描かれていないもっと大変な状況の方々もいるだろう。
それでも自分らしく生きることとは何か。
この映画はきっと「ここにいるよ、あなたの思っていることなんかじゃない私が存在するよ」と誰もが叫べるための一歩になると思う。誰もがみんなそう叫んだら、世界は変わっていく。その一歩を共に踏み出す希望の映画だと思う。
丹下紘希
人間
自立って、まずは人に頼ることなんだな、と自覚させてくれる作品。それが家族でなければ、誰に頼れば良いのだろう。助けをどこに求めれば聞いて貰えるのだろう。仕事でありながらも、新しい家族の絆が生まれていくのを見て、続きがもっと知りたくなった。
Shing02
MC / 音楽家
最初から最後まで全カットずっと面白い。この映画は疾走感を右手に、そして深い余韻を左手に、観る者がもつ「自立」や「障害」の固定概念をぶんぶんと揺さぶってくる。近づいたのではなく、近くなっていたのだと思う、そんな監督のまなざしの中で、そこにいる人々、そして「インディペンデントリビング」に魅了された。何というドキュメンタリーだろう。
望月優大
ライター / ニッポン複雑紀行編集長
働きすぎて、くも膜下で失語症になったトリス。厳しい母の言葉でてんかんになるあっすー。自責にかられる母の葛藤。それぞれの試行錯誤を見ながら、みんな社会という縛りの中でなくしてしまった大切なものをみつける途上のように見えた。誰もがその人らしくいきるために、もがきながら魂を磨いてる。障害の有無は勿論大きな違いなんだけど、強く伝わってきたのはそんなことでした。
寺尾紗穂
音楽家 / 文筆家
よくありがちな〈元気をもらいました〉だなんて感想で言いたくない!なぜ障害を持つ人たちを撮ったのか?答えは簡単。彼ら1人1人が魅力的な被写体だからだ。そんな彼らが抱えるリアルな問題と自立をていねいに描いた作品です。
関口祐加
映画監督 / 「毎日がアルツハイマー」シリーズ
様々な個性(障害)、様々な思い。
でもそれぞれに輝いている人生。
寄り添う介護者と仲間たちと困難に立ち向かうでもなく折れるでもなくしなやかに生きている人々の生きる姿を是非あなたも知ってほしい。
岡部宏生
JPA(日本難病・疾病団体協議会)理事/NPO法人境を越えて理事長
人間の底知れぬ魅力を、こんなにも歯切れ良く面白く、またポップな作品として世に放った田中悠輝監督と関係者のみなさんに最大の拍手を送ります。この映画に出会えて良かった。本当に良かった
ドリアン助川
作家
渕上さんが言う。
「この事業やるために、頸損(頸椎損傷)なったんじゃないか」って。
そう。偶然を必然に変えるひとのことを、ヒーローというのだ。
上野千鶴子
社会学者
人はどんな状態にあっても、自分らしく自由に生きようと思う。でも「障害者」であるという枠組みがそれを許さない。障害は乗り越えるべきもので、「感動をもらい、励まされた」話であるかのように描かれる。そこでは、障害を負った経緯や負担、障害者本人の思いなく、障害に耐えて、負けまいと頑張る姿がクローズアップされる。「清く正しい障害者像」が作られ、感動的な姿ばかりを取り上げたがるのが「感動ポルノ」だ。
「感動ポルノ」は当事者をもその枠の中に閉じ込めてしまう。その外に生きることは身勝手なのか。障害の克服に努力しなければいけないのか。外部の視点が期待する枠の外に出て暮らすのは、人の当然の権利ではないか。それを実現しようとする運動は、まさに「人間復興」だ。決められた枠から出て生きることはその人の自由だから、その枠を取り去るための活動が「Independent Living」だ。
田中優
環境活動家
スマートフォンのチャットアプリを使い、女の子をデートに誘う知的障害者のたいきさんと、後ろから小声でアドバイスをする新人ヘルパーのバンドマン川﨑さん。 私はスクリーンを観ながら、「もっと上手い言葉で口説けよー!」と不器用な男達にやきもきしつつ、「でも女の子と話すのは緊張するよね…」と昔の自分を思い出したりもしました。
田中監督は「障害者の自立支援」をめぐる様々な困難や複雑な思いと共に、そういった誰にでもあるような生活の一場面を丁寧に積み上げて映画にしていました。それは被写体の魅力を一番に伝える最良の方法だったと思います。だからこそ、映画を見終えた後でも出演者のたくさんの表情がずっと頭の中に残り続けています。そんな新しい出会いに満ちたドキュメンタリー映画です。
岩淵弘樹
ドキュメンタリー映画監督