「蛙の憲法」 鎌仲監督日記

2014.05.27

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今日は雨ですね。 梅雨が近づいているのかもしれません。
田んぼの中ではかえるたちが元気です。
私は農村で育ったのでこのかえるたちの声が大好きです。
おおむかし、草野心平という詩人が書いた文章をふと思い出して
引っ張り出してみました。
「蛙の憲法」です。
歌は沢山あるが、それは何十億全部に共通して歌われているようである。
ソヴィエトの国歌もアメリカの国歌もなくあるのは人類の歌だけということ
らしいのである。
われらは侏羅に生を享け。
羊歯の林や泥の河。
恐竜などに踏まれつつ。
土と水との幾万年。
いまだに強く栄えたり。
半ばは土に息ひそめ。
半ばは天の美を生きて。
星のかんざし陽のキララ。
夜と昼とを歌いたり。
夜と昼とを歌いたり。
ああ七月の満月の。
満潮時はめぐりきぬ。
地球の友ら いざたちて。
われらが生のよろこびを。
声をかぎりに讃えなん。
ごびらっふというのは日本の蛙たちのなかでの最長老であった。惜しいことに昨年死んだ。私は一昨年、そのごびらっふを訪ねたことがあった。人間界では核兵器の問題がかまびすしいので、一寸蛙世界の軍備の問題をきいてみたかったのである。
ごびらっふ老は率直に私に答えてくれた。「それはあります。目下ガマニン弾という兵器をつくっています。けれども、それはですね。あなた方の世界のように人間同士に対する軍備ではないのです。仮にです。いま地球上に何千憶かのマンモスが現われて人間に襲いかかるとしますね。そうしたときの軍備なのです。人間同士や蛙同士の殺しあいのための軍備ではないのです。
私は序でに蛙たちの憲法についてきいてみた。
「憲法というようなものは、ありますか」
ごびらっふ老はまた即座に答えた。
「それはあります。ただし第一条何何タルベシというようなものはありません。憲法といっても実は歌なんですよ。歌は百三十ほどありますから、さしずめ百三十条ですかな。
よるひるを われらはうたう
いきるうた よろこびのうた
よるひるに われらささげる
いきるうた うつくしいうた
これは一番みじかい憲法です。恋愛の憲法もありますが、それもやはり歌です。
何しろ総理大臣もいませんから簡単ですよ。憲法は簡単がいいですよ。でもあなた方の世界は複雑怪奇ですからたいへんですな」
ごぶらっふ老はそういって、五月のそよかぜを深呼吸したが、私はいまでもあの時の表情を憶えている。
そういえば、この草野心平さんの詩を歌っているのが歌手のNUUさん。
るんるん るるんぶ
るるんぶ るるん
つんつん つるんぶ
つるんぶ つるん
と心に直接響くような声で歌われる。ぜひ、みなさんも蛙の声にあわせてお聞き下さい。
NUUさんのサイトはこちら。
http://nuu-nuu.com/