東京新聞・言いたい放談「もうけるためではなく」 (2014・2・26)

2014.03.13

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東京新聞「言いたい放談」2014年2月26日 朝刊放送芸能面に 掲載
もうけるためではなく
出身地、富山県で小さなお話会に呼ばれた。70町歩もの田んぼが広がる村で女性たちが中心になり、内部被ばくの勉強会をしたいというのだ。その会が終わり、お茶を飲みながら雑談をしていたところ、村で代々お米を作ってきた農家のご老人が、次のように語った。
「私達は春になれば野に出て、田んぼを耕し、秋になれば収穫する。その収支を計算するということもなくこれまでお米を作り続けてきました。ところが、昨年初めて思うところあり、計算してみたらほんのちょっとだけ赤字になっていた。これまではとんとんだったのかもしれない。私達はもうけようと思ってやってきたのではない。そこに命があり、お米で命がつながると思ってやってきたのです。お米というのは単にお金と交換する商品ではない。しかし、もう後がないのではないか、こうやってお米を作っていくことが私の代で終わってしまうのではないか、と感じています。」と。
なんだか、私は胸の奥がざわざわするような、何か重大な事を告げられたような気持ちになった。この地域で被ばくをテーマにするような会が持たれたのも初めてのことだったが、言葉にできないような強い危機感に包まれていた。
そのご老人は最後に「これからは女性たちが命のために働いてくれるような気がします」、と結ばれた。本当にそうであって欲しい。
(映像作家)
 
この出来事は
富山県高岡市で「内部被ばくを知ろう」講演会を開催

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での出逢いでした。
 
次回掲載は2014年3月12日です。
どうぞお楽しみに。