7月、ベラルーシ取材に行ってきた鎌仲監督が、スタッフの私たちに持ち帰ってくれたお土産はちょっと変わっていました。
亜麻で織った、大きなそのままの布です。
なんでも、ベラルーシでは亜麻の織物が特産品なんだそう。
これを、手作りが得意なスタッフKさんがランチョンマットにしてくれたのが、こちら!
早速自宅で重宝しています。
それにしても、ベラルーシの特産品について、全く知らなかったな、とこのお土産をもらって気づきました。
元ソ連で、チェルノブイリ原発事故の被害が大きい、貧しい国、というイメージがありましたが、それだけしか知らなかった自分に気づいたのです。
そこで少し、ベラルーシのことを知ってみたくなり調べてみました。
「ベラルーシ共和国」ができたのは、ソ連崩壊後の1991年のこと。
まだ国としての歴史はほんの20年くらいなんですね。
一方、今ベラルーシと呼ばれている地域には、石器時代からずっと人が住んでいたそうです。
今の西ヨーロッパ、ポーランド、バルト三国のあたり、そしてロシアといった、力をもったエリアの間にはさまれていた地形ゆえに、交易のために人がゆきかい繁栄した時期
もあれば、ひとたび戦争となると、戦禍に巻き込まれがちな歴史でした。
他民族にしばしば支配された経験があるベラルーシ人は、自他ともに認める「悲劇の民」とも言えます。
でも、他民族に翻弄された歴史をもつ民族って、けっこう、隠れた強さや、同じように苦労する人への思いやり、が特徴的だったりします。
ベラルーシ人も、まわりの大国に翻弄される中で、周辺国を過剰に敵視したりぶつかりあったりせず、うまくやっていく処世術や、ヨーロッパ中で迫害されていたユダヤ人を
寛容に受け入れるおおらかさを身に付けたようです。
まわり中強い人たちに囲まれて、それでも独自の言葉や文化や伝統を受け継いできたベラルーシの人たちは、実はなかなかのやり手かもしれません。
そんなベラルーシの人たちの間で伝統的に受け継がれてきたものの中に、亜麻の織物があります。
白い亜麻布に赤い糸で幾何学的な刺繍模様が施されているのが典型的なベラルーシの民族衣装だそうです。
亜麻布のことをリネンとも言います。
同じ麻の仲間に、ヘンプやジュートといった素材もありますが、亜麻は中でもっともやわらかく、肌触りがよく、強くて上等です。
通気性・吸湿性に優れていて、あつーい日にリネンのものを身につけていると、木綿にくらべて3度くらい涼しく感じるとか。
しかも、防カビ性に優れ、雑菌の繁殖を抑制するため、臭いもつかず、汚れ落ちもしやすく清潔感もばっちり。
とっても重宝するので日本でも人気がありますよね。
特にナチュラル志向の人たちにも人気が高いリネン市場を狙って、最近のベラルーシでは国をあげて亜麻製品を売り出していこう!と頑張っている様子です。
亜麻の繊維は、フラックスという一年草から採れます。
これが、寒い国でも、雨量にかかわらず、肥料や農薬もあまり必要とせずぐんぐん育つので、まさにベラルーシのような場所で耕作するにはぴったり。
耕作面積でいうと、亜麻の栽培に力を入れているベルギーやフランス、ウクライナやロシアも抜いて世界2位なんです。
ちなみに1位は中国ですが、加工されたリネンは、ベラルーシから中国へ輸出もしています。
まだ、ベラルーシのリネン産業全体では赤字、だそうですが、ヨーロッパから最新の設備も導入し、質の良いものを戦略的に売り出そうと一生懸命です。
ちなみに、フラックスの使い道は、リネンだけではありません。
種はパンづくりや甘いのみものの材料にもなるんです。
6月に開花する青や白の花は、国の紋章にもなっています。
まさに亜麻製品は、ベラルーシの人たちの衣食住をささえてきた心のふるさとのような存在のようです。
そうわかると、お土産にもらったこのリネンのランチョンマットが、いっそうありがたく感じられるようになりました。
本当に、すっごく肌触りもよくて、汚れ落ちもよくて、気持ちいいし、ベラルーシの歴史と情熱が詰まった一品だ、と実感します。
日本でもっともっと、こういう製品を通じてベラルーシのことが知られる日が来たら嬉しいなぁ、と思います。
そして改めて、FUKUSHIMAが、「原発事故のあった場所」とだけ世界に記憶されてしまうとしたら、なんて悲しいことだろうと思いました。
福島の自然の美しさや豊かな暮らしのこと、福島を愛している人が沢山いること、その中で福島で生きることを選ぶ人もいれば避難を決めた人もいること。
もっと沢山の人に知ってもらえますように。
「カマレポ」や「小さき声のカノン」ではそんなベラルーシ取材の一部をお見せできると思います。
中身は主にチェルノブイリ原発事故後のことについてですが、その歴史や暮らしのことにも思いを馳せながら観ていただけたら嬉しいです!
★参考 ベラルーシの特産品について
(staff ワダ)