小さき声のカノン―選択する人々

English

チェルノブイリから30年、ベラルーシで放送。鎌仲監督メッセージ

チェルノブイリから30年、ベラルーシで放送。鎌仲監督メッセージ

ポーランド国営放送の配給でチェルノブイリ30年を迎える、今日
ベラルーシで「小さき声のカノン」が放送されます。
(ヨーロッパ時間ではこれから)
 

「小さき声のカノン」の中で重要なパートを占めるベラルーシ。福島原発事故の未来がそこにある、と思い取材しました。中心になっているのはもう50年ちかく現地で小児科医として活動をしてきたスモルニコワさん。彼女が体験してきたこと、圧倒的なリアリティをもって迫ってきました。子どもたちに何が起きたのか、そして、今、その影響はどうなっているのか。私たちは、もう一度謙虚にこの事実に向き合わなければならないと感じています。

 
☆たった一つの原発が・・☆

チェルノブイリ原発事故はたった一つの原発が爆発した事故でした。福島原発事故は三つの原子炉がメルトダウンし、そのうちの二つが爆発しました。チェルノブイリ原発は固い地盤の上に建っているので二年で石棺を建造することができました。放射性物質の放出は封じ込めることができたのです。しかし、福島は柔らかい地盤の上に建っているのでチェルノブイリのような石棺を建てることもできない。地下に潜り込んだ高レベル放射性物質を隔離することもできない。大気に海に未だに放射性物質は放出され続けています。この違いを忘れてはいけません。

チェルノブイリの影響は世代を越えて続いています。
その事を私たちが現在進行形で体験しつつある福島原発事故のその後を重ね合わせてみるべきだとずっと思っています。

 
☆なんと多くの人生が変えられたことか

チェルノブイリ原発事故も福島原発事故もなんと多くの人々の人生を変え、
そして今も変え続けているのか、私はいつも想像してみるのです。

その中には私自身も多くの友人たちも、まだ会ったことのない人たちも含まれています。
取り返しのつかない喪失、汚染された大地と自然。
環境が汚染されたなら、人体だって同じように汚染されるのです。
そこから逃れることは難しい。

私たちは忘却に抗うと同時、救済を求めていきたいし放射線の影響から命を守りたいと、
その方策を実践していきたい。そして原発事故を二度と繰り返したくない、と。

「チェルノブイリの祈り」でノーベル文学賞を受賞した
スベトラーナ・アレクしエービッチさんは最近、朝日新聞のインタビューに
「人間は放射線に対処する準備はできない」とし、「自然に対する人間の立ち位置を見直す新しい哲学が必要です」
と答えている。また、小さき名も無い人々の声にこそ他のどこにもない真実が込められている、とも。

私は「小さき声のカノン」を撮影していた時、同じように感じていました。
専門家ではなく、まさしく現場で放射能汚染を生きている人々の声を聞きたいのだ、と。

http://www.asahi.com/articles/ASJ470PC3J46PTIL01Y.html

 
☆川内原発と伊方原発

熊本に地震が起き、その震度が6、震度7だというのに震源のすぐそばにある川内原発が停止していません。多くの市民、地域の人々、文化人、科学者が停止を呼びかけても原子力規制庁も政府も止めようとしない。その上、地震が拡大していこうとするその中央構造線断層帯の延長上に位置する伊方原発が安全審査をパスしたというニュースまで飛び込んできた。7月には再稼働されるかもしれないというのだ。

本当に多くの人々が、日本だけではなく世界中で空いた口が塞がらないほど驚いている、と思う。何かが起きてからでは遅い、ということはもう身にしみて解っているはずなのに。

私たちはもうこれ以上、原発の心配をしながら暮らしたくないと心底思う。

54基もの負の遺産と化した原発が日本列島のあちこちに地雷のように埋め込まれている。いつどこで起きるか解らない地震に耐えられるのか、きっと耐えられないだろう。おりしも今日、ニュースで世界一厳しい基準と安倍総理が豪語していた日本の基準が実は国際基準にも達していなかったということが判明した。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160425/k10010497931000.html

川内原発は約束した免震重要棟を4年以内に建てると言っていたがその前に地震が起きたではないか。地震の揺れにおびえる被災者に、原発の心配までさせることはない。アメリカではハリケーンが来ると解ったら原発は止めると、GEの関係者が証言していた。

なぜ、日本ではこの事態で止めることができないのか。
一刻も早く、川内原発を停止してもらいたい。
チェルノブイリの忘れ難いこの日に切望する。 

鎌仲ひとみ

(C) 2024 ぶんぶんフィルムズ / BunBun films

PAGE TOP